とうきょうエコ・コレクション

H26年度インタビュー第4回

地域に根ざした環境教育を支える、八王子市『エコひろば』

●渡辺 政行(わたなべ まさゆき)さん

 エコひろば(八王子市・環境学習室/温暖化防止センター)所長兼副理事長

●加藤 晋次郎(かとう しんじろう)さん

 エコひろば(八王子市・環境学習室/温暖化防止センター)事務局


【八王子市「あったかホール」について】

市の南東・北野町にある「あったかホール」。4階建ての建物の入口に「八王子市余熱利用センター」の看板が掲げられている。隣接する北野清掃工場のごみ焼却余熱を利用した建物で、3階と4階は市民が格安で使える「温水プール」と60歳以上を対象とした無料の「浴室」、余熱は館内の冷暖房にも利用されている。2階には喫茶コーナーと常設のリユースマート。1階のエントランスホール奥には「クルリくん」と名付けられた古紙再生の大掛かりな模型が展示されている。スペース内の「おもちゃの病院」では、二人の年配の方が持ち込まれたおもちゃを修理中。その奥に『エコひろば』の受付があった。館内をひと巡りしてみると、この施設が市の環境活動の拠点であり、また市民の健康づくり、コミュニケーション、文化活動等に幅広く活用されている様子がうかがえた。

ハイキングでおなじみの高尾山や陣馬山、と言ってもすぐに八王子市を思い浮かべる人は少ないのではなかろうか。八王子市は、人口56万人が生活する大都市でありながら、186km2の広大な市域(都庁のある新宿区が18.23 km2なのでその10倍に当たる)にこの山々や多摩などの丘陵地、浅川や谷地川など多くの河川が流れる、水とみどりに恵まれたまち。この八王子市の環境教育・学習や環境情報の発信と地球温暖化防止活動を進める拠点が、「あったかホール」内の『エコひろば』。ここの運営を市から委託されている「NPO法人環境活動センター八王子」の渡辺さん、加藤さんに、小学校での環境教育支援や地球温暖化防止活動についてお聞きした。

人材育成と温暖化防止をともに進める

――入り口の『エコひろば』の案内板に、八王子市環境学習室、八王子市温暖化防止センターの名前と、再生可能エネルギー、省エネルギーに関する相談窓口、とも書かれていました。『エコひろば』の活動について教えて下さい。


民間活動インタビュー 平成26年度第4回

加藤晋次郎さんと渡辺政行さん


渡辺 『エコひろば』は平成17年、ちょうど10年前に立ち上がりました。八王子市の環境学習室と温暖化防止センターとなる場所で、私どもNPO環境活動センター八王子が、市から委託を受けここの運営に携わっています。もともとは10年ほど前に市が「環境市民会議」と名付けた緑地などの環境保全を市民が地域で実践活動する組織を作りました。環境学習室は、その市民の交流の場所や活動を発表する拠点を作ってほしいという声に応えて作られました。その後、平成23年に、市内の温暖化対策を推進するため、温暖化防止センターが併設されました。


――「環境市民会議」というのは?


渡辺 平成14年の環境基本条例で取りきめられたボランティアの方々の活動です。八王子市は広いですから、環境保全推進地区として市内を6つに分けて、これらの地区の環境保全に携わってくれる方をボランティアで募ったのが最初です。300人ぐらい集まりました。


加藤 私は中央地区に所属していますが60人くらいです。その中に部会があって、川部会、町部会など、私は自然エネルギー部会に入っています。これらのメンバーが、環境学習室と一体となって活動しているわけです。


渡辺 八王子には16の一級河川があります。ここは浅川が中心の流域で、昔は川で泳いでいたと言いますが、戦後の高度成長期から市の人口が急激に増えて下水道の整備が追いつかなくなって、生活排水のために川が汚れて臭うようになってきた。それではいけないということで、市が下水道の完備を急ぐとともに川の浄化活動に市民、事業者のみなさんが参加するようになったのです。市の環境保全活動が活発化したのもその頃からです。現在では下水道の整備率はほぼ100%になっています。


加藤 5年前ぐらいからとてもきれいになり、今では、鮎もきます。


――活発な市民の環境活動を支えているわけですね。


渡辺 『エコひろば』は、環境市民会議に支えられ、10年間歩んできました。今後も、更にこの態勢を進めて行きたいと思います。


――1階のホールに、八王子市の“巨木マップ”や“街路樹マップ”が掲示されていましたが、あれは?


加藤 あれも環境市民会議が作ったものです。市内の湧水を調べたりもしています。


民間活動インタビュー 平成26年度第4回

環境グリーンマップ(クリックで拡大 PDF1.5MB)

40回を超える小学校環境教育支援

――環境学習室の活動を教えて下さい。


渡辺 主な事業は「講座・イベントの開催」「自然体験講座」「教育支援」「人材育成」4つです。八王子に残された地域の自然、文化、歴史を学習したり、屋外に出て環境の素晴らしさを体感してもらうための各種の体験講座を実施しています。地区ごとに『水辺ウオッチング』『里山探検隊』『蛍観察会』などさまざまです。体験レポートを書いてもらってWebに掲載していますのでご覧になり参加してほしいですね。


――この体験学習は市民向けですね。小学校ではどんなふうにしているのでしょう?


加藤 小学校の環境教育支援は、今年(2014年)は66回ぐらいやっています。


渡辺 八王子市立の小学校が70校ありますが、1校で2~3回やりますので学校数では22校で実施したことになります。環境教育は総合学習で扱うわけですが、小学3年生から始まって、4年生で地域の自然環境を学ぶことになります。「自然環境を教える」といっても経験があまりない先生もいますから、具体的にどこへ出かけてどう教えたら良いかわからないことも多い。そこでこちらのアドバイスで企画することもあります。屋外に出る場合は父兄の方にもなるべく参加してもらって先生と私どもと三者で協力する形をとっています。

『川のいきもの』『源流』『田んぼと生きもの』など

――具体的にはどんなテーマがあるのですか。


加藤 テーマは『川のいきもの』『川の石・地層』『源流』『田んぼと生きもの』など様々です。やはり浅川や多摩川など川に入ることが多い。あとは学校周辺の自然調べなどもあります。環境学習室から支援のために環境市民会議のメンバーや「環境学習リーダー」を派遣するのですが、生きものに詳しい人や鉱物に詳しい人などテーマによって適宜人選することと、それに安全が第一ですから、支援者一名が目配りできるのは最大で10名として人員構成することにしています。生徒さんが50人であれば最低でも5~6名を派遣しています。


渡辺 今年のこれまでの参加児童数は延べ4,000名を超えていますし、参加支援者数は450名に近くいます。そのほかにも、環境学習に関する講座やイベントなどを随時実施しています。

それから、この体験学習で学習したことの発表会を『エコひろば』で開催しており、今年も2月7日(土)に5回目を行いました。また、子供たちに日頃の環境の取り組みを発表してもらい、子供に聞いてもらうことを目的として、『こども環境まつり』を開催しており、今年の3月8日(日)に4回目の開催を予定しております。その日はこの「あったかホール」前でフリーマーケットが開かれ、100店ぐらいが出店して親御さんや子供たちでにぎわいます。その人たちにも発表会に参加してもらうのです。


民間活動インタビュー 平成26年度第4回

川のいきもの調べ

民間活動インタビュー 平成26年度第4回

川の石観察

民間活動インタビュー 平成26年度第4回

川辺でバードウォッチング

八王子市独自の資格、「環境学習リーダー」と「環境診断士」

――「環境学習リーダー」というのは、何か資格に関係するのですか。


渡辺 さきほど申し上げた『エコひろば』の事業の「人材育成」の一環です。市には環境に関する独自の資格として、「環境学習リーダー」と「環境診断士」というのがあります。「環境学習リーダー」は、私どもが実施する「環境学習養成講座」を受講してもらって市が認定する資格です。期間は半年間、40コマの講座です。講座では環境全般を学びますが、座学だけでなく、高尾山や浅川を中心とした市内の河川を実際に歩くなど、フィールド体験やグループ研究にも取り組んでもらいます。平成14年度から開始され、現在約190名ほどが認定を受け、地域の環境市民会議で活動しています。


加藤 私も第6期の受講生ですが、座学の内容は「循環型環境社会」「八王子市の気象と環境」「大気環境」「食と環境」「八王子の農業」など、幅広いテーマを取り上げていて、とても興味深かったことを覚えています。


――「環境診断士」というのは?


渡辺 市民の皆さんや事業者さんが地域の環境問題に取り組む際に、その地域の環境を独自の指標「ちぇっくどう」を用いて診断し、また、そのアドバイスを行う役割を担っています。


加藤 環境市民会議メンバーの協力のもと、「環境診断士」が河川の水質検査や大気汚染、例えばNOX濃度などの定点観測を実施していますね。


渡辺 専門的な知識が必要ですから、これも「環境診断士養成講座」という講座を受講してもらって市が認定します。「環境学習リーダー」や市が認めた環境に関する各種の資格、自治体での環境保全の仕事に従事した経験、それに教員経験など、いずれかに該当していることが講座への応募資格になります。

高く掲げられた、八王子市のCO2削減目標

――「温暖化防止センター」もこうした方々と連携して活動なさっているわけですね。


渡辺 そうです。『エコひろば』のメンバーは全員で11名ですが、「環境学習室」と「温暖化防止センター」の両方を運営しなければなりません。イベントや各種の事業のたびに「環境学習リーダー」や「環境診断士」に集まってもらっています。


――市の温暖化防止の目標などはありますか?


渡辺 市が平成22年3月に市民と協働で策定した『八王子市地球温暖化対策地域推進計画』が柱になります。そこで市のCO2排出量削減目標を「平成31(2019)年度の排出量を平成12(2000)年度比で、人口一人当たり25%削減、総排出量18%削減を目指します」と宣言しています。


――他の自治体と比べても、かなり高い目標ですね。


渡辺 そうですね。温暖化防止センターは、この目標に沿って、市の環境政策課から委託を受け、様々な活動をしています。組織としては、運営委員会と3つの部会で構成されています。運営委員会は、運営に関する事項を協議し、率先して行動する組織で、、3つの部会は、CO2排出量の多い家庭部会、事業者部会、交通部会で、それぞれの部会がCO2削減に向けた活動を展開しています。

「省エネチャレンジ」や「みどりのカーテンコンテスト」

――具体的には?


加藤 家庭部会ですと、「省エネチャレンジ(家庭の省エネ運動)」です。夏と冬の2か月間、各家庭においてチェックシートを利用しながらエアコンや照明などの省エネに取り組んでいただくものです。その他、家庭の省エネ講座や、省エネ診断、エコワット(簡易型電力量表示機)の貸し出しも行っています。それとみどりのカーテンコンテストは昨年で3回目でした。住宅や各団体さんなど70件の応募があり、11月に表彰式を行いました。


――小中学生向けに、省エネに関しての取組は何かありますか?


加藤 やはり「省エネチャレンジ」ですね。「みんなで地球温暖化防止に取り組もう !」というリーフレットと「チェックシート」を利用しながら、子供たちに5日間、家庭で省エネに取り組んでもらいます。

チェックシートの取組項目は、使っていない電気をこまめに消す、水を出しっぱなしにしないなど、身近に取り組める内容ばかり。

地球温暖化を身近な問題として認識してもらい、省エネに対する意識の向上を促すことを目的としています。

平成26年度は市立小学5年生と中学1年生を対象に実施し、小学校61校、中学校31校が参加しました。

児童・生徒一人あたりのCO2削減量が多かった小中学校のそれぞれ上位3校をCO2削減優良校として表彰し、記念品として間伐材でできた鉛筆を贈りました。


民間活動インタビュー 平成26年度第4回

省エネチャレンジ
(クリックで拡大 PDF521KB)

民間活動インタビュー 平成26年度第4回

「省エネチャレンジ2014」取組成果
(クリックで拡大 PDF163KB)


――交通部会と事業者部会では?


民間活動インタビュー 平成26年度第4回

エコドライブ教習会


渡辺 交通部会ではエコドライブを柱にして活動しています。それと八王子には、約2万の中小企業があり、まだまだ省エネの余地が残されています。一方、大企業にはエネルギー管理士などの資格を持った人もいます。事業者部会では、そうした専門家にこれらの中小事業所の省エネのアドバイスや省エネ診断への協力を得ることができれば良いと、地元同士の連携を模索しているところです。



この地域を好きになってもらうこと、その良さを引き継いでいくこと

――最後に、今後の『エコひろば』の活動についてひとことお願いします。


加藤 先程お話した浅川は八王子の代名詞になっているような川です。『浅川流域市民フォーラム』というのがあって、日野市も含めた、浅川や谷地川、大栗川流域の市民の集まりです。環境市民会議が実施する自然体験講座として、イカダ作りと川くだりや水生生物の観察など、子供を対象にした川に親しむための催しものに『エコひろば』も関わっています。やっぱり子供たちには外に出てもらって、課外活動にどんどん参加してほしいですね。長い目で見れば、それが環境問題への理解に繋がっていくと思います。


渡辺 加藤さんの言うように、自分の地域を良く知って、好きになってもらうこと、その好きになったまちを後世に残しておけるような行動に参加してもらうこと、それを『エコひろば』のコンセプトにしていきたいですね。


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