とうきょうエコ・コレクション

H27年度インタビュー第2回

立川市が商工会議所と連携して、中小企業、小規模企業を省エネ支援

●神宮 聖治(かみみや せいじ)さん

 立川市環境下水道部環境対策課 温暖化対策係 係長

●柚木 正史(ゆぎ まさし)さん

 立川市環境下水道部環境対策課 温暖化対策係 主任

立川市は「あきんど」の街として発展してきたそうです。それだけに、立川市と市の産業振興に深いかかわりを持つ商工会議所との連携は昔から続いてきました。市はJR駅南北エリアを中心に多くの事業者が集積しており、その大多数が中小企業という産業構造上の特徴をもっています。そして、市の税収に占める法人市民税は約13%と、都内26市の平均の2倍と高くなっています。ですから、経済活動に伴うエネルギー消費の割合も他の都市に比べて高くなっており、業務部門が占めるCO2排出量は46.3%(2012年)で、最も多い部門になっています。こうした立川市で、商工会議所と連携しつつ市の温暖化防止・省エネ推進に取り組んできた神宮聖治さんと柚木正史さんに話を伺いました。

「都内中小クレジット」とセットの中小企業向け支援

――立川市では、立川商工会議所と連携して、中小企業が取り組む省エネ対策を支援していると聞きました。その概要を教えてください。


民間活動インタビュー 平成27年度第2回

神宮 聖治さん

神宮 大きく分けて3つの事業を進めています。一つは、無料の省エネ診断です。それと、中小企業向けと小規模企業向け支援で、これは省エネ改修に対して補助金を支給する支援ですが、省エネ診断を受診することが前提になっています。正式名称は「中小企業二酸化炭素排出量削減事業施設改修費補助金」と「小規模企業二酸化炭素排出量削減事業施設改修費補助金」です。
省エネ診断は、東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)の無料診断を商工会議所さんの協力も得て診断先に応募してもらっています。じつは平成24年度までは、都の受診対象が、年間のエネルギー消費量が原油換算15kL以上だったので、それほどエネルギーを使っていない小規模企業からの省エネ相談や無料の省エネ診断は商工会議所にお願いしていました。現在は、15kL未満は都の「省エネルギー現地アドバイス」がありますので、クール・ネット東京の事業を利用させてもらっています。
中小企業向け支援は、省エネ診断の改善提案に基づいて実施する省エネ改修に対して補助するもので、対象設備は、業務用エアコン、LED照明など高効率照明器具、省エネ型業務用冷蔵庫の取り換えなどです。補助金額は、経費の1/2以内で上限は100万円です。都内中小クレジット(*)を創出できることが条件ですが、このクレジットや補助金の手続きは手間がかかることもあり、市が指定した3つの支援事業者がお手伝いできるような仕組みにしてあります。


民間活動インタビュー 平成27年度第2回

中小企業二酸化炭素排出量削減事業施設改修費補助金 事業スキーム図(クリックで拡大)


*「都内中小クレジット」について:東京都では、地球温暖化防止のためのCO2排出削減策として、大規模事業所に対して「総量削減義務と排出量取引制度」を実施しています。この制度では大規模事業所へのCO2削減義務が課されていますが、自力で削減できない事業所に対して義務を達成するために「クレジット」、つまり他の事業者が削減したCO2量を入手して、自らの削減量の不足分に充てることができる制度となっています。

都内にある中小規模事業所(原油換算エネルギー1,500kL未満)において省エネによるCO2削減が期待できる場合、「都内中小クレジット」を創出し、大規模事業所に売却することができます。「都内中小クレジット」を創出する事業所のメリットとしては、①認定基準に適合した省エネ対策により、光熱費の削減ができる、②クレジットの売却益を取得できる、③大規模企業の総量削減義務に利用可能なクレジット(環境価値)として認定を取得できる、があげられます。

神宮 小規模企業もやはり省エネ診断の改善提案に基づきますが、CO2削減1トンという条件が付く中小クレジットは難しいこともあり、この条件は付けていません。補助金額は経費の1/2以内で上限は10万円です。小規模企業というのは従業員が20人以内、商業やサービス業では5人以下の事業者を指しています。

事業完了まで受診事業者をサポートする「支援事業者」

――支援事業者がお手伝いするというのは?


民間活動インタビュー 平成27年度第2回

柚木 正史さん

柚木 はい。省エネ診断による提案書を受けても、それを実際に改修工事につなげて業務を完了するまでには、「省エネ改修補助申請書」「クレジット申請書」「温暖化対策報告書」などの書類作成や取引口座の開設などの業務が発生しますが、人手がなくそのノウハウもない事業所がほとんどです。そこで、各種の申請書類に関する関係先との事前協議や書類の届け出、工事完了の審査立ち合いまでの一連の業務をサポートしてくれる企業を「支援事業者」として指定したわけです。


――受診する事業者にとってはありがたいことですね。どのように選ばれたのでしょう。


柚木 公募です。4社程度を想定しましたが、本年度は3社です。市で審査会を設けて選定しました。改修工事をする事業者さんにどの支援事業者を選択すればよいか相談されることもあります。3社はそれぞれ得意分野がありますから、こちらで一応のサジェスチョンはしますが、受診する事業者が施主になるわけですから、最終的には事業者が決定します。


省エネ・CO2削減への取組み姿勢がさまざまな中小企業

――事業者の省エネへの取り組みはどんな具合ですか。またこれらの事業を進めていこうとしたきっかけは何だったのでしょう。


神宮 じつは2010年に、市と商工会議所が共同で市内の中小事業者に対して、環境対策に関しての調査を実施しました。その結果、温暖化対策への対応について3つのレベルに分類できることがわりました。


レベル1は、現状のエネルギー使用量を把握しておらず、CO2削減といわれても自分たちには無関係だと考えている事業所です。レベル2は、エネルギー使用量などのデータ管理はできていて、節電行動も行っています。ただ、省エネ改修をしたくても資金がなく、導入機器についての情報も不足しています。省エネといっても電気代など経費節減が目的で、CO2削減への貢献という意識は薄いのです。レベル3は、理念として環境配慮の取組みを実施している事業所です。省エネ機器への更新やBEMS等の導入を図っています。再生可能エネルギー機器や蓄電システムの導入も検討するなど、CSR活動も推進しています。

こうした現状でしたから、まずはレベル1や2の事業所に積極的に働きかけていこうということになり、商工会議所と連携して、CO2排出量削減対策を展開していくことにしたのです。


平成21年から「環境ECO推進協議会」を立ち上げ活動していた立川商工会議所

――立川商工会議所さんとは以前から密接な関係をお持ちなのですね。どのようにしてそうした関係を作ってこられたのでしょう。市の特徴も含めて教えてください。


神宮 立川は中央線や青梅線、南武線など鉄道網の結節点ですから、JR立川駅を中心にして商業集積が進んでいます。みなさんは、立川市というと駅周辺の大規模商業施設を思い浮かべがちなようですが、駅の南北エリアには、非常に多くの中小規模事業所が集まっています。とくに北部の砂川地区には中小規模の製造業、工場が集積しています。税収に占める法人市民税の割合も約13%と、都の26市平均の2倍になっています。ですから、事業所の経済活動に伴うエネルギー消費の割合も、他の都市に比べて非常に高く、CO2排出量削減は非常に重要な課題になっています。業務部門の占めるCO2排出量が全体の 46.3%となっており、最も多い部門になっています。

このように、商業の地であり、また、小規模事業所・中小企業も集まっていますから、必然的に産業振興が市の発展の礎になる、という認識があります。これは立川市も立川商工会議所も同様で、市は従前からいろいろな場で、行政と経済団体という形で車の両輪となって事業を行ってきました。

民間活動インタビュー 平成27年度第2回

昨年度の環境シンポジウムの様子

神宮 じつは私は8年間、市の産業振興課におりまして、4年前にこの環境対策課に異動してきました。ですから、商工会議所とはお付き合いがありました。商工会議所は平成21年に「環境ECO推進協議会」を立ち上げて、簡易省エネ診断や都の省エネ診断のあっせん、環境シンポジウム、事例発表会などを続けてきています。市の中小企業支援のスキームが現在の形に落ち着いたのは昨年度(平成26年度)からですが、それ以前から連携の土台はできていたわけです。


応募件数の70%が商工会議所の紹介

――診断の応募はどのようにしているのですか。


柚木 もちろん市でもホームページや広報等で公募しますが、応募の70%程度は商工会議所の紹介です。商工会議所には、飲食業部会、建設業部会など各種の部会があります。やっぱり地域の事業所さんと直接お付き合いのある商工会議所の力が大きいですね。市内には6,000以上の事業所がありますが、そのうち約3,000事業所が会員です。商工会議所のニュースは効果がありますし、商工会議所の方を介して、じかにターゲットの方々に知ってもらうことができます。


――このスキームは去年から始まったそうですが、どのくらいの件数が実施されているのでしょう。


柚木 昨年(平成26年度)と今年(平成27年度)の件数ですが、省エネ診断数、中小事業所の省エネ改修、小規模事業所の省エネ改修の件数を順番にあげますと、昨年が、12件、3件、10件、今年はこれまでで、14件、10件、4件となっています。今後も申し込みが見込まれていますから、もっと増えるでしょうね。


――どんな業種が多いのでしょう。


柚木 いや、いろいろですね。ちょっとあげてみますと、中小企業では、化学工業、製造業、不動産賃貸業、割烹など大きめの飲食業、金属製品製造業、ビルメンテナンス業などです。小規模企業では、お肉屋さんなど小売業、居酒屋さん、中華料理店などの飲食業、仕出し弁当業、美容院、建築リフォーム業などもあります。


民間活動インタビュー 平成27年度第2回 民間活動インタビュー 平成27年度第2回 民間活動インタビュー 平成27年度第2回

省エネ改修事業を活用した事業所(一部)

「空調機が壊れちゃったんだけど、何とかなりませんか」という相談も

――ところで、事業所が応募してくるきっかけはどのようなことがあるのでしょう。


柚木 小規模の事業所さんに多いのですが、例えば、省エネ改修の取っ掛かりは、空調が壊れちゃったんだけど何とかならないか、という相談などもあります。商工会議所に補助金の話を聞いてきたのでしょうね。先ほどのレベル1に近い事業所さんです。やはり、電気料金の領収書もそろっていないことが多いです。

こうした場合は、まず、これは環境の補助金で、最初の入り口は省エネ診断を受けることなんです、という説明から始まります。エネルギー管理をしっかりしてくださいと。電気代も下がりますが、省エネで下がった分だけCO2の削減につながることを理解してもらわないと、補助金の意味がありませんから。


神宮 そうですね。市の補助金を使って、照明をLEDに取り換えたり、エアコンを高効率なものに替えて光熱費の削減につなげたりするだけでは、言ってみれば産業振興策と変わりありません。それプラスアルファがないと。私どもの役割は、電気やガスの使用量をしっかり管理し、省エネ行動を習慣づけてもらうこと。CO2削減という社会的貢献に寄与してもらうことが、私どもが作った仕組みの中で、補助金、つまり市の税金を使う意味が出てくると思うのです。

地域の金融機関、不動産業界、建設業界など、ステークホルダーのネットワークを

――今後、どのような取組みをしていこうとしているか、お聞かせください。


神宮 地域の省エネ・低炭素化のネットワークを充実させていきたいですね。立川市と立川商工会議所は協力関係にありますし、市内には商業施設などの大型建物、不動産業、金融機関、電気や設備、造園事業を含めた建設会社もそろっています。建物の省エネ化は建物価値を向上させますから、それに不動産業や建設会社が協力する、また金融機関が「環境配慮型」融資あっせん制度で後押しするなどです。我々は、建物別・業種別の省エネ情報を提供したり、相談窓口となったりする。クレジット創出の支援もできます。これらのステークホルダー間の連携をもっと進めていきたいのです。

じつは、私たちは個人的な立場で、まちづくり会社の社長様、建築士の方などをメンバーとした仮称ですが「チーム・ゼロ・エミッション」というチームを作り「地域でできる省エネ活動」の勉強会を始めたところです。こちらも続けていきたいですね。


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地域の省エネ・低炭素化のネットワーク スキーム図(クリックで拡大)



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