過去インタビュー詳細 平成25年度vol5

H25年度インタビュー第5回

省エネビルで重ねる日々の改善活動-ビル環境に携わる各部門の連携が生み出した成果-

中央労働金庫本店

●遠藤 和司(えんどう かずし)さん

 財務部(管財)担当部長、エネルギー管理企画推進者

●近江谷 俊英(おうみや としひで)さん

 財務部(管財)エネルギー管理員

●赤上 達夫(あかがみ たつお)さん

 中央労働金庫本店ビル管理会社設備員

【中央労働金庫本店の建物概要】

延床面積:5,703m2(すべてオフィスとして利用)   階数:地上9階、地下1階

竣工年月:2009年2月(竣工後4年経過)   省エネ診断実施日:2013年1月15日

前回の塩崎ビルに続いてオフィスビルの省エネ対策について紹介します。クール・ネット東京では、東京都からの委託を受け、中小規模事業所のビル・工場等を対象に無料の「省エネ診断」を実施してきました。その数は5年間で2000件以上に達します。今回は平成25年に省エネ診断を受診頂いた事業所の中から、担当した診断員の評価が高く、きめ細かな設備の運用管理で成果を上げている中央労働金庫本店にお伺いし、省エネ活動の展開についてお聞きしました。

――「省エネ診断」を受診したきっかけ、動機についてお聞かせ下さい。

民間活動インタビュー 第5回

遠藤和司さん

遠藤 私ども中央労金は、『働く人の夢と共感を創造する協同組織の福祉金融機関』として、経済・福祉・環境の向上に取り組み、そして人々が喜びをもって共生できる社会の実現に寄与することを目的としています。こうした活動の一環として省エネは環境問題に繋がる重要な取組課題であると認識しているところですが、実際に本店ビルの省エネが適切で効果があるのかということになり、第三者に客観的に評価頂くことがスタートになるのではと考え、診断を受けることと致しました。

――東京都の診断はどのようにしてお知りになりましたか。

近江谷 偶然にも取引先の方から東京都で省エネ診断を行っていることを教えていただきましたので、後日クール・ネット東京さんに問い合わせてみましたら、丁寧に診断内容を説明いただき、ぜひ一度受診してみてはいかがですかと勧められたことがきっかけとなりました。

――具体的な省エネ活動については後ほどお聞きすることにして、受診なさった全体的なご感想はいかがでしょう。

遠藤 省エネ診断員の方から、同規模の事務所ビルのエネルギー消費原単位と比較して2/3程度の使用であり、大幅な省エネができているとの高い評価を頂きありがたく思う一方で、内心ほっといたしました。空調設備と照明設備関連で約8割のエネルギーを消費しているのですが、このビルが最新式のダブルスキン構造であることや空調運転時間を明確化し全熱交換機の間欠運転を採用していること、さらに照明の部分消灯によりこのような高い省エネ成果が得られていることを具体的にわかりやすく評価していただきました。

また、診断報告書では「見えない省エネ」として、私どもが日頃気づいていないところでの電気の無駄遣いを専門家から具体的に指導いただき、改めて、まだ、省エネの余地があることを知り「省エネ診断」頂いたことが非常に参考になりました。

――ダブルスキン構造とはどういうものですか。また、エネルギー消費が少ないこととどう関係しているのでしょうか。この点についてはビル管理をお願いしている赤上さんから説明してもらった方が良いですね。

民間活動インタビュー 第5回

3階以上の窓にダブルスキンを採用

民間活動インタビュー 第5回

夏は開口窓を開けて排気

赤上 このビルは3階から上の窓が全面ダブルスキン、つまり50センチメートルほどの幅をもった2重構造になっており、その空間に電動ブラインドが設置されています。夏には窓からの日射で暖められた空気が優に50℃を超えるので、その空気を屋上の開口窓から逃がすことで冷房負荷、つまり冷房に必要な電力を減らすことができるのです。反対に冬には開口窓を閉めて暖められた空気をダブルスキンの中に閉じ込めることで、上層階では45℃程度となりますから暖房効果を得られるという訳です。春や秋では、外気取入口からフレッシュエアーを取り入れてスキン部窓の一部を開けて換気しますから、空調設備の動力はほとんど必要ありません。

設計監理会社の試算では、通常の壁面構造の建物に比べて空調では約40%のエネルギー削減が期待できるということでした。最初は半信半疑でしたが、最近では削減効果を実感として感じられるようになりました。ただし、構造上、清掃等のメンテナンスが必要となります。

――氷蓄熱というのは。

赤上 夏の時期だけの対応なのですが、夜間の安い電力を利用して作った氷を氷蓄熱槽に貯めておいて、それを昼間溶かしながら冷房に利用するものです。夏の電力のピークカットに役立っています。

――「見える化」による電力管理を進めているそうですね。

民間活動インタビュー 第5回

デマンド監視装置で常時監視

赤上 はい。デマンド監視装置を導入して、電力の使用状態を常時監視しています。昨年の冬のことでしたが、会議室も含めて全ての執務室の空調と照明が同時に使用されたことがありました。電力使用量が急上昇しデマンド目標値を超えそうになったため、館内放送で設定温度を1℃下げる協力を呼びかけました。この時の経験から、今ではデマンド目標値を超えそうな場合には、対策として共用部分を第1段階とするなど3段階に分けてスケジュール管理するようにしました。

 

――省エネ、とくに空調や照明の対策ではどのようなことを。

民間活動インタビュー 第5回

社員にも空調の注意を掲示

民間活動インタビュー 第5回

照明の点灯マップ

赤上 やはり空調と照明の管理が中心になります。空調設備のリモコンスイッチ上部に「冷房使用時⇒換気口・窓閉」「ドライ運転禁止」などの注意事項を貼るようにしました。ちょっとしたことなのですが、皆さん気を付けて頂いてくれますから運転の効率化に繋がっています。

遠藤 照明では思いきった部分消灯を実施しました。共用部、事務所の執務エリア通路部分など用途に応じた照度を確保しながら蛍光管を取り外し、これで45%の照明電力の削減になりました。あとは不要時の消灯の励行ですね。管理をお願いしている赤上さんが各階の照明用スイッチパネルに色分けし点灯エリアマップを貼ってくれたおかげで、誰でもすぐに不要な照明に気づくようになりスイッチを消すようになりました。

――省エネを担当する管財部門とビルメンテナンスの方との連携がうまくいって成果があがったわけですね。ほかに赤上さんから何かありますか。

赤上 デマンド管理や種々の対策については、ご担当の近江谷さんをはじめ管財部門の方々と相談しながら実施していますが、細かい点ではある程度任せてもらっている部分もあり運用しやすくなっています。具体的には、給湯やトイレの温水やジェットタオルの使用は極力ご遠慮いただいております。ただし、お客様が使われる場合もありますので、十分配慮した上で実施させていただいております。

――ところで、省エネのための体制はどうなっているのでしょう。

遠藤 中央労金は「省エネ法」でいう特定事業者に指定されていますので、専務理事をエネルギー管理統括者として、私がエネルギー管理企画推進者の役割を担っています。管財部門は本店ビル館内の全環境を担当するとともに、中央労金全体の省エネ設備等を整備しております。エネルギー管理企画推進者に必要とされるエネルギー管理員講習には、毎年、管財部門の職員が受講するようにして、全員が徐々にエネルギー管理の知識を身に付けられるように努めているところです。また、各支店については、それぞれ支店長に責任者となってもらい省エネに取り組んでもらう体制を進めています。

――「省エネ法」の特定事業者は、事業者全体のエネルギー使用状況の報告書を毎年提出することになっています。支店ごとの省エネは具体的にどのように取り組まれているのでしょうか。

遠藤 各支店には、本店ビル同様、デマンド監視装置を導入していますので、本部でも電力の使用状況をチェックしています。その上で、夏と冬に基準となるデマンド目標値を支店ごとの状況に合わせて設定することにしています。

――近江谷さん、報告書の作成等でご苦労なさったことはありますか。

民間活動インタビュー 第5回

近江谷 俊英さん

近江谷 この仕事を引き継いだ時には、150以上の全拠点のエネルギー状況を集計して報告するわけですから、正直なところとんでもない業務を任されたなという印象がありました。しかし、拠点ごとの日々のデータが蓄積されて行くにつれて、地域性や建物によってエネルギー消費の違いや、どのくらい省エネに努力してきたかが手に取るように把握できるようになりました。また、1日の電力使用量のグラフを見ると、朝にピークとなる支店やお昼頃にピークとなる支店などさまざまでした。朝一番で急上昇している支店には空調機器・照明・パソコン・端末等を一斉に起動しているのではないかということで、スイッチは徐々に入れるなどの指導をすることもあります。ですから一律に原単位の1%削減などとはせずに、支店ごとの特性に合わせてデマンド目標値を設定し、協力をお願いするようになりました。

これまで省エネの取組みは感覚的なものでしたが、数値ではっきり把握できるようになったことで的確に支店への指導ができるようになり、今ではこの業務に対してやり甲斐も感じられるようになりました。

――本店も各支店も実情に合わせたきめ細やかな管理がなされていますね。最後に今後の抱負を遠藤担当部長からお聞かせください。

民間活動インタビュー 第5回

財務部(管財)の皆さま

遠藤 今回の診断では、全体的に設備の運用管理面で高い成果を上げているという評価をいただきましたが、空調設備のきめ細かな運用や照明の適正管理がいかに重要なのかを良く理解することができました。さらに、動力や換気設備、特に待機電力にも注視するようになりました。一人1台のパソコンや多種多様のIT機器が設置されていますので、OAタップをグループ使用することで、可能な限り待機電力を減らすことができればと考えています。

また、診断報告のなかでは貴重な改善提案についても頂いておりますので、今後しっかりと現場で実践をしていきたいと思います。省エネ活動は、誰か1人が頑張ってみても限りがあります。たとえ小さな行動であっても多くの職員の取組みを積み重ねることで大きな効果へ結びつけることができるのではないかと考えています。そのような意味からも、省エネへの取組みは協同組織金融機関である労働金庫の活動に相通ずるものがあると思います。

今回の診断報告を受け、改めて職員一人ひとりが省エネをさらに深く理解・意識して行動することが地球温暖化防止に確実に繋がることを組織全体にしっかりと発信していきたいと思います。ありがとうございました。

中央労働金庫

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